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2026.09.11業績

業績更新(Furukido et al.)

当研究室の成果が、Veterinary Research Communications誌より出版されました(2026年9月11日付)。


論文タイトル:Effects of bovine lactoferrin on the growth and biofilm formation of Escherichia coli and Klebsiella pneumoniae associated with bovine mastitis

著者:Rin Furukido, Yuzo Kurokawa, Naoki Isobe, Naoki Suzuki

雑誌:Veterinary Research Communications 50(563)  リンク


ウシ乳房炎の主要病原体であるEscherichia coli(大腸菌)とKlebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)は、牛床などの牛舎環境を感染源とし、搾乳以外のタイミングで感染する日和見性の環境性乳房炎として整理されてきました。このため、多くの疫学報告において両菌種は「大腸菌群:coliforms」としてまとめられてきました。


これまで我々の研究室では、両菌種が乳中で増殖する際、特定の鉄獲得経路(クエン酸鉄獲得能)への依存度が高いという共通点がありながらも、乳中の内因性抗菌タンパク質であるラクトフェリンへの応答性が異なることを報告してきました(Furukido et al., Microb Pathog. 2025) 。これらの経緯から、両菌種のウシの免疫機能、とくにラクトフェリンへの応答性について詳細に解析してきました。


その結果、細菌が自ら分泌する多糖類などの物質に包まれて表面に付着し、集団で生存する膜状の構造である「バイオフィルム」の形成に関して、両菌種がラクトフェリンに曝露された時のバイオフィルム産生応答が明確に異なることを発見しました。具体的に、肺炎桿菌はラクトフェリン曝露によりバイオフィルム形成が阻害されましたが、大腸菌は逆説的にその形成を増強させることが分かりました。これまでラクトフェリンは、その抗バイオフィルム活性に着目されてきましたが、乳房炎に関連する大腸菌においては逆説的な結果となりました。


この結果により、①大腸菌が宿主由来の免疫物質に反応してその生存戦略を変化させている、②これまで大腸菌群としてまとめられてきた両菌種であるが、酪農環境における感染・生存戦略の違いが見過ごされてきた可能性がある、という示唆が得られました。


両菌種における乳房炎はあとを絶たず、現代酪農においてはこの「環境性乳房炎」をいかにコントロールするかが乳房衛生・生乳衛生の鍵となります。今回の成果は、見過ごされてきた菌種ごとの感染・生存戦略の違いから、菌種にあわせた制御法の開発に繋がることが期待されます。


本研究成果は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(課題番号:24K18003)の助成を受けて得られたものです。